雲の向こうに

1,開かずの扉

 今日は月ごとの報告会の日だった。
「えー,以上のことで何か質問は?」
いつものように質問などなく,会議は1分の超ハイスピードで終了した。
 その後,これまたいつものように宿舎のメンバーがぽつりぽつりと退席していくなか,ミュンヘルは書類の整理に手間取って遅れていた。
「何だってこの・・・」
何とか書類もまとまったところで足早に会議場をあとにしようとすると,あたりに違和感を感じた。
 何だろう・・・冷房がきいているわけでもないのに妙に涼しい。冬のような冷気だ。しかし,今の季節は春。気温も30度を超え,蒸し暑いぐらいだ。それにしてもこの冷気はどこから・・・
 すると,どこからか声がした。
「誰か・・・」
しわがれた男の声。
「誰だ?」
よく探すと開かずの扉のほうから,その声はしている様だった。
 開かずの扉とは,使われていなかったこの棟の部分を改装したとき,唯一改装されなかったところである。らしい。冷気もそこから流れてきているようだ。
 そこへ,ベルリスがやってきたので事情を説明した。
「何とかして開けないと!!」
だが,ベルリスは首を振った。
「この扉は,この古屋を買い取ったときからあって50年来,未だに開いてないんだ」 
それでもミュンヘルは必死になってノブを引いたり押したりしていた。
「でも,中で人が・・・!!」
いくらガチャガチャやっても扉は一向に開く気配をみせない。
「それでもわからなければ仕方ない。下がってろ」
そのときクリューはロケットランチャーを持ち出してきて一発打ち込んだ。
「っはっっっっっっっ!!」
二人とも吹っ飛ばされるくらいの威力があったが,扉はびくともしない。
「わかったか?俺たちが今まで開けなかった理由が」
 そのときミュンヘルは閃いた。引いても押してもだめなら横に引けばいいのではないか?
いや,でも一応ノブついてるしな・・・。これで開いたら協会の人の50年間踏みにじることになるよな・・・。
「あのさ・・・これ横に引いたりできないかな?」
クリューは,はっと気づいたようで,心配するミュンヘルをよそ目にかなり関心している様子だった。
「その手があったか。。」
「とりあえず,やるだけやってみよう」
 ミュンヘルは半分やけくそでノブを握り,引いた。
「あっ・・・」
すると,そのとき恐ろしいほど簡単に50年以上閉ざされ続けてきた扉が開いた。「なんということでしょう」(ビフォーアフター的な)というノリでは割が合わないだろう。あーあ,開いちゃった。しかしながら何で今までこんなことを誰も気づかなかったんだろう・・・。不思議でしょうがない。
「寒いな・・・」
 扉の内側は50年以上放置されていたわりには驚くほどクリーンな環境だった。奥のほうには大きな扉らしきものが見え,そこから冷気がきているようだった。
「・・・行くか」

「扉が開いた!?」
 ミュンヘルは思う。当然の反応だ。俺だって驚く
「何で開いた?」
何で気づかなかった?
「誰が開けた?」
俺が開けた。特に楽しくはないが,いちいち答えてみた。
「で?」
で?ってなにがだ?すべて話したはずだが。ベルリスと話をするといつも一貫性がなくて苦労させられる。

その後ヘンリーとネムなどいつものメンバーと共に,ミュンヘルは扉の向こうへと歩いていった。


2,白の世界

 あの引き戸に入ってから何分が経っただろうか。相当長い廊下のようなところを目の前に見える光を手がかりにひたすら進んでいく。
「なぁ,俺らいつまで歩くんだ?」
ベルリスが音をあげた。誰だよ行くって言ったやつ・・・。
 まぁ,それはいいとして確かに進んでいる気配はない。GPSもさっきから反応がないのだ。
「まさか床が動いてるとか?」
「そりゃねーよ」
 しかし,本当に着くのだろうか。さっきからあの男の声は聞こえているのだが・・・。
「なんか,地面動いてるんじゃねえのか?」
ベルリスが冗談を言った。つもりだったのだが,本当に地面は動いていた。
「おい,なんか音しねぇか?」
後ろを振り向くと高速で何かが近づいていた。
「逃げろ!!早くあの出口まで!!」


※編集中

削除,移転に関して

本編の方はこちらになってます。
今後ともよろしくお願いいたします。